『星を継もの』
ジェイムズ・パトリック・ホーガン
あらすじ
宇宙連合軍(UNSA)の月面調査によって、宇宙服を皆に纏った人間の死体が月で発見される。しかしその死体はどこの国、機関にも所属していないことが判明したうえに、なんとその人間は約5万年前に死亡したものだった、、、。
死体と共に発見された手帳には世界のどの言語にもない文字が記されていた。果たして、約5万年前に月に到達するほどの技術文明をもった、ありとあらゆる身体組織が全く同じこの人間は一体何者なのか?
感想
1.物語は終始一貫して"この死体は何者なのか?" 結論もよかったし、答えに至るまでの過程もおもしろかった。ハントは最初ダンチェッカーのことを教条的なやつだと決め込むけど、最終的に結論に至ったのはダンチェッカー(笑)
2.結論の『人類の起源は地球ではなかった』とそれに至るまでの過程もおもしろかったけど、1つだけ疑問だったのが、ルナリアンが地球にやってきたときに知識や技術全てを失ってしまっていること。もちろん失ってないとこの物語は成り立たないんだけど、知識や技術を伝承できなかった理由の推測をもっと記述して欲しかったなと。(氷河期で厳しいから的なのがさらっと書いてあった気がする)
3.僕はなるべく記述されている風景を頭の中で再現したいタイプなんだけど、何回か出てくる月面の様子の描写が難しすぎてイメージ出来なかった、、、。何よりアメリカの単位系としてヤードポンド法で書かれてるから直感ですんなり入ってこないんですよね^^;
最後に、エピローグでコリエルの電子機器が発見される描写があったのは最高でした!『ああコリエルちゃんと地球に来れてたんだ(涙)(涙)』って感慨深いものがありました←
あとは時系列を理解した上でプロローグとエピローグ読み返すとなんかこう、グッときます。笑 おっちゃんにコリエルの帯投げ捨てられたときは発狂しました(笑)
終わり
2007年生まれの子供は50%の確率で107年以上生きる
平均寿命が伸び続けていることは、多くの人が知っていることだと思います。
織田信長は『人生50年』と謳いましたが、今日では50歳で亡くなったと聞けば "早すぎる" と感覚的にも思うでしょう。
しかし感覚的に理解していても、実際どのくらい伸びているか知らない人もいると思います。
国連の推計によれば、
2050年までに日本の100歳以上人口は100万人を突破する見込みであり、
また人口学者たちは
2007年に日本で生まれた子供の半分は107歳以上生きると推測しています。
要するに、過去の人たちより我々は長く生きる可能性が非常に高いのです。
このことを一言で表すなら "長寿化" ですね。
長寿化は良いことでしょうか、悪いことでしょうか。
答えは
"良いことにもなりうるし、悪いことにもなりかねない" です。
なぜなら、長寿化によって何がどのように変わるかを理解している人としていない人によって、結果が変わってしまうからです。
長寿化によって今までのような教育→仕事→引退の3ステージモデルは崩壊します。モデルが崩壊するというよりかは、このモデルのまま戦略を立てると、戦略自体が崩壊することを意味します。
3ステージモデルの崩壊は 年功序列・終身雇用の終わり、年金問題など、様々な形をして徐々に姿を表しています。
過去のロールモデルは既に機能しないのです。
そこで長寿化によって何がどのように変わるのかを理解し、最適な人生戦略を練る参考になるのが『LIFE SHIFT』です。
『LIFE SHIFT』では主に以下のことがまとめられています。
➀長寿化の影響によって具体的に何がどう変わるのか
②機械化・AIの進歩を踏まえた雇用について
③健康・知識・仲間といった無形資産の重要性
④長寿化によって生まれる新しい人生ステージ
⑤100年時代のお金の概念、諸問題
⑥100年時代の時間の使い方
⑦100年時代の人間関係のあり方
⑧個人・企業・政府・教育機関が直面するであろう課題について
です。
本を読み終えて、
長寿化の影響によって変わる働き方、夫婦の関係、お金の概念、余暇の使い方、健康問題、人間関係のあり方を理解し、最適な人生戦略を計画して欲しい。それを支えるために政府や企業も柔軟性を持って制度を作り直して行く必要がある。
これが筆者の思いなのではないかと私は考えます。
ここ数年のグローバル化とテクノロジーの進化によって、人々の働き方は大きく変わりました。
長寿化によっても働き方は大きく変わります。
変えなければならないのに、それがテクノロジーの進化のときより理解されないのは、長寿化そのものを実感出来ていないからだと思います。
テクノロジーの進化は生活に浸透していき、気付いたときには皆が勝手に対応していました。しかし寿命が伸びたと実感するのは、何かデータを見ない限りには、自身が80歳から100歳まで健康的に生きた"そのとき"なのです。
長寿化に関しては実感してから動くのでは手遅れになります。長寿化という事実は前もって知っているからこそ対応できるのです。
繰り返し言いますが、この本は長寿化の影響によって変わる生き方を理解し、最適な人生戦略を計画する際の示唆を与えてくれます。
長寿化は多少の差はあるものの "すべての人"
に起こっている現象です。
なのでこの本は "特定の誰か" ではなく、この長寿化時代に生まれた"すべての人" にオススメの本です。
幸福の土台となる3つの資本
誰しもが皆、
""幸せになりたい""
そう漠然と思っているのではないでしょうか。
しかし何が幸せなのかは各個人で異なります。それは何に価値を感じ、何をしているときが楽しいと感じるかは人それぞれだからです。
例えば、ファッションに重点を置いている人は新しい服を買ったときに幸せだと思いますが、そうでない人はそもそも頻繁に買い物をしません。
これにはどちらの方が幸せだという優劣はありません。なぜなら、何に価値を感じるかは人それぞれだからです。
""幸せ""は主観的なものであり、自分で定義することなのです。
しかし自らが定義した"幸せ"を築くための土台作りに関しては、共通して言えることが多くあります。
その土台を3つの資本で説明したのが『幸福の資本論』です。"幸せ"という捉え難いものを3つの資本から考えることによって、最適な戦略を立てるための示唆を与えてくれます。
『幸福の資本論は』part0から4で構成されています。
part0では3つの資本の概要と、それらを組み合わせた8つの人生パターンについて触れます。また、著者がこの本を執筆するに至った背景を『貧困』の観点から説明しています。
part1では3つの資本のうち『金融資本』について触れます。マイナス金利や日本政府の借金など、金融市場の現状を知ることで戦略を立てる際の参考にします。
お金事情について詳しくないと、最適な戦略が立てられないのは、感覚的にもわかりますよね。
part2では『人的資本』=時間や身体、またそれを使って働くことについて触れます。ここでは知識社会化・グローバル化・リベラル化など、労働市場の現状を知るためのキーワードと共に、働くことについて考えます。
経済学などを学んでいない人でも理解できるよう、とてもわかりやすく書かれていると思います。
part3では『社会資本』=他者との繋がり について触れます。人間関係を3つの空間(愛情空間・政治空間・貨幣空間)に分け、どのような人間関係を築くことが望ましいかを示唆してくれます。
今まで私は人間関係を 家族、友人、彼女(彼氏)、同僚、上司、先輩後輩など、記号として捉え、またそれぞれ仲の良さの濃淡などを感覚的に把握していました。しかし空間という概念で考えたことは一切なかったので、新しい物の見方を教えてくれました。
最後にエピローグでは、3つの資本、金融市場・労働市場の現状、好ましい人間関係のあり方を踏まえて、著者が考える『幸福を実現するための最適戦略』を提示しています。
そして最終的な結論として人は『幸福を目指して頑張っているとき』が最も幸福なのかもしれないとしています。
幸福論に関して学ぶことは、ただ漠然と自分の幸せを追い求めるより、戦略的に考えられるようになるという点で非常に意義のあるものだと思います。
また今日では、SNSの発達で他人の幸せが可視化され、主観的であるはずの"幸せ"を他人と比較してしまいがちです。
もう一度、自分にとっての"幸せ"とは何かを定義する必要性が高まっていると思います。
その際に、ただ漠然と"幸せ"を追い求めるのではなく、戦略的に追い求めましょう。
この本はその一助になると思います。
最大の学びを得る読書技術
皆さんの本を読む目的って何でしょう??
少なからず何か目的があって本を読んでいる方がほとんどだと思います。
それは周りの同僚と共通のトピックで語れるようにしておくためとか、単に情報や知識の蓄積であったりと様々だと思います。
しかし根本には、皆本を読むことで何かしらの学びを得たいと思っているのではないでしょうか??
かくいう私も本を読むことで新しい価値観に出会えたり、物の見方を発見することが出来るのでよく本を読みます。しかし自分が読んだ本の書評などをAmazonやブログなどで見ていると、同じ本を読んだはずなのに私とは全く異なる視点で学びを得ている人たちがとても多くいたのです。当然、本に抱く感想や批評は人それぞれ異なります。しかし他の方々の優れた考察を見ていると、私ももっとこの本から多くの学びを得られたのではないかと思うようになったのです。
そこで出会ったのがこの本です。
https://www.amazon.co.jp/dp/4061592998/ref=cm_sw_r_cp_awdb_c_RR0zAbWH4MQSV
この本は『物事を深く理解するための読書技術』を我々に教えてくれます。
当然のことではありますが、ただ字面を目で追うより、高度な読書技術を身につけた上で読んだ方が、1冊の本から得られる学びは多く、定着度もまるで違ってきます。
『本を読む本』では読書には4つのレベルがあると言います。それが以下の4つです。
➀初級読書
②点検読書
③分析読書
そして各段階で必要な読書技術を教えてくれる
のがこの本なのです。この読書技術をもってして、
➀主要なテーマと細分化されたトピック
②テーマに関する著者の主張と根拠
を説明できるようになり、
③著者の主張に対する読み手の批評
を行うのです。
本は4部構成になっており、1部序盤ではラジオやテレビ、ネットニュースなど情報を得る媒体が数多くある中で、あえて本を読むことから学びを得る意義を、『教わること』と『発見すること』の違いを踏まえて説明していきます。
『読む』という行為への見方も定義していて、とてもわかりやすいです。
1部中盤からはこの本の核である4つの読書レベルのうち➀初級読書と②点検読書について具体的な方法を学びます。
2部は③分析読書についてです。具体的な技術については省きますが、ここでやることは著者の主張と根拠を理解し、ひたすら内容の解釈に努めることです。本の中の表現を借りるのであれば、それは『著者の精神と出会う』ということです。
ところでこの本では、この本の提示する読書技術の対象を主に教養書と定めています。しかし小説や戯曲などの文学作品を読む際にも考え方を応用することは可能であり、第3部では『文学の読み方』について触れています。
個人的にこの章はとてもおもしろかったです。小説を読む際、感覚的に行っていたことが言語化されていて、すんなりと腹落ちすることが出来ました。結論を言ってしまうと、
小説を読む際は
"著者の世界観を体験することに努める"
それが重要だと結論付けています。これには非常に納得で、私は日常ではできない体験を、SF小説を読むことで擬似体験していたのであり、加えて日頃から物理や科学などとは縁のない私だからこそSFが他のジャンルの小説より面白く感じるのだなと思いました。
そして最後の第4部では読書の最終レベルであるシントピカル読書についてです。簡単に言うと比較読書のことであり、同一テーマに対して複数の著者の考え方を知り、自身の主張に客観性をもたせることを目的とします。
以上4つの読書レベルを踏まえて、本を構造的・解釈的・批評的に捉え、1冊の本から最大の学びを得るのです。読書には4つのレベルがあり、この本では各レベルにおける具体的技術を提供してくれます。
『本を読むための本』類のものは多くありますが、ここまで実践的な本には初めて出会いました。
1冊の本からより多くの学びを得たいと思う方々にオススメの1冊です。